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■バンドウイルカ「フジ」人工尾びれプロジェクト

 2002年秋、バンドウイルカの「フジ」は、病気で尾びれの75%を失いました。イルカの人工尾びれを作ることは可能なのか?尾びれを装着することで普通のイルカのような動きができるようになるのか?
 私たちは、フジの尾びれをつくり、イルカの尾びれがもつ役割を科学的に検証することを目的として、株式会社ブリヂストンの全面的な協力のもと、人工尾びれプロジェクトを開始しました。




「フジ」について
 バンドウイルカ(学名 Tursiops truncatus)の「フジ」は、静岡県伊東市川奈(かわな)で捕獲され、1976年11月、羽田からの空輸で沖縄フジにある海洋博公園に運ばれてきました。
 推定年齢39歳、体長271cm、体重211kg(2008年8月1日現在)。3頭の仔(こ)を持つ優秀な母イルカです。仔イルカは、個体名リュウ(オス、1978年5月20日生)、個体名コニー(メス、1989年6月9日生)、個体名チャオ(オス、1995年11月18日生)。
 残念ながら、リュウは2005年5月29日、腎盂腎炎(じんうじんえん)、慢性の肺炎が原因で亡くなりました。27年と9日目の飼育記録は、水槽生まれのバンドウイルカとしては日本最長飼育記録でした。




尾びれの病気について壊死(えし)した尾びれ
 フジに異変が見られたのは、2002年10月16日のことでした。午後より食欲不振(しょくよくふしん)、尾びれの遠位端(えんいたん)から変色、壊死(えし)が進行しました。血液検査および血液生化学検査(けつえきせいかがくけんさ)の結果(白血球数:11600/,赤沈値:83mm/60min,カリウム値:8.3mEq/L など)から、感染症(かんせんしょう)および循環不全(じゅんかんふぜん)を併発したと推測され、2002年10月25日と11月7日に壊死部(えしぶ)を電気メスで切除しました。その間、抗菌薬(こうきんやく)、輸液(ゆえき)の静脈内投与(じょうみゃくないとうよ)を60日間行い、フジは、一命は取り留めたものの尾びれの約75%を失いました。



人工尾びれが出来るまでフジの全身
 フジの人工尾びれプロジェクトは、2002年11月27日、当公園の獣医師がブリヂストンスポーツ株式会社にいる友人に人工尾びれ作製の可能性を相談したことから始まりました。相談から7日後、株式会社ブリヂストンで作製の可能性を探る会議が開かれ、フジの傷が完治した後に改めて具体的な話し合いをすることが決まりました。2003年4月30日、フジの尾びれの擦過傷(さっかしょう)が完治(かんち)したことを受け、同年5月21日、株式会社ブリヂストンとの共同研究による人工尾びれプロジェクトが正式にスタートしました。
 このプロジェクトは以下のような科学的検証を目的として行われました。

・科学的検証により作製されたイルカの人工尾びれが実際に機能するのか
・人工尾びれを装着することで、尾びれがあった時と同じような行動ができるのか
・他のイルカと同じような行動ができるようになるのか

 

完治したばかりの尾びれ


 決して、フジがかわいそうだから作ろうという考えだけに端を発するものではありません。尾びれが小さくても、フジが水族館で日々生活をしていく上で問題はありませんし、野生にも同様の鯨類(げいるい)がいることが報告されています。



人工尾びれについて
第1型人工尾びれ 2003年7月5日にシリコンを用いて尾びれの型どりを行い、9月12日に第1型人工尾びれ(材質:硬度40度シリコンゴム、横幅48cm、縦幅30cm、重量2.0kg)が完成しました。9月25日、水深60cmでフジに装着し、遊泳試験を行いましたが、尾びれの着脱(ちゃくだつ)と固定の方法に問題があり、尾柄部(びへいぶ)に擦過傷(さっかしょう)が発生。外形・材料等の再検討を行うこととなりました。数々の検証を重ねた結果、まずはイルカ本来の尾びれの外形を忠実に再現した模型が必要との判断が下され、アクリル造形師に更に精巧(せいこう)なレプリカ作製を依頼しました。  (写真は第1型人工尾びれ)


 

 

アクリル造形師作の実物大のレプリカ 2004年3月上旬には、バンド装着タイプの第2型人工尾びれ(材質:硬度70度および40度シリコンゴム、横幅70cm、縦25cm、重量2.2kg)が完成。しかし、バンド型は水の抵抗を大きく受けることが分かり、カウリング型(飛行機などのカバーからきている名称)への改良が行われました。
 2004年6月12日、カウリング型の第2型人工尾びれ(材質:硬度70度、CFRP補強板(ほきょうばん)入、横幅70cm、縦25cm、重量2.2kg)の装着試験を行い、遊泳中の尾びれの動作が、海洋博公園にいる他のイルカと同様であり、機能的に有益な尾びれであることを確認しました。
(写真はアクリル造形師作の実物大のレプリカ)

 

 

第2型人工尾びれ


 この段階で、人工尾びれの強度は通常の遊泳ではほぼ問題がないことがわかりましたが、大きな負荷のかかる垂直ジャンプ試験においてカウリング部分と人工尾びれ本体部が破損。ジャンプに耐えるにはさらなる強度が必要となることがわかりました。現在は、カウリングと補強板の材質と工法、シリコンゴムの強度の検討を行っています。
(写真は第2型人工尾びれ)

また、今後は日本鯨類(にほんげいるい)研究所と共同研究で遊泳速度の解析を行い、鯨類(げいるい)における人工尾びれの有益性の検証を進めていく予定です。(つづく

人工尾びれでの遊泳その1人工尾びれでの遊泳その2

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